2020/10/29 16:34

粟国島にはソテツが数多く自生しており、あちこちで見かけることができます。ソテツは約1億5千年前の生き残りと言われ、現在見られる裸子植物の中でも最も原始的な植物です。根にシアノバクテリアという空気中の窒素を固定するバクテリアを住まわせ、そこから肥料を供給しているので潮風や台風、乾燥にも強く生き延びてこられたと言われています。


粟国村植物目録〈1981年)によると、蔡温の時代に他の樹木が育たないのでソテツが植えられたとあります。その後、山火事により群生が減少。戦前戦後の食糧難の際には、葉は燃料、実や芯は食材として、雄花は肥料として余すところなく使われたと言いいます。同じく食糧難に陥っていた渡名喜島に買われていったこともあるそうです。

「そてつ実そ」はまず、収穫した大きなオレンジ色の実を割り、天日干しして中の白い部分を何度も水にさらし発酵させ、毒抜きします。さらに、粉にしたものを乾かし、麹を作って大豆と混ぜ味噌に仕立てます。島では昔、「タンナージューシー」というソテツのでんぷん・そてつ味噌・長命草などを混ぜて炊いたおじやのような料理を食べていたそうです。ソテツの葉で運動会の門やクリスマスツリーを作ったりと、現在でも島の皆さんには馴染み深く愛着のある植物なのだと思います。

粟国島の「そてつ実そ」はその貴重さから、メディア取材や大学の研究対象、料理研究家の方の取材など様々に注目されてきました。伝統的な作り方を引き継ぐ味噌そのものが、ソテツと共に生きてきた島の記憶と文化の継承に繋がっています。